第69回日本東洋医学会学術総会 2日目 レポート

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今日私にとっての一番のお話は、総会の予定にはない発表でしたが「大韓スポーツ医学会、平昌五輪&パラリンピックの活動記録」です。
2018年1月31日から2月26日まで、平昌選手村での施術の報告です。
学会所属の漢方医(韓医)25人が、リハビリ医学科、内科、耳鼻咽喉科、神経科、婦人科の診療を鍼、漢方薬、チュナ(オステオパシーのようなものだそうです)、吸い玉、テーピング、運動療法、物理療法によって行ったそうです。
施術を受けたのは42カ国の選手、役員、ボランティアなどで、計892名です。
興味深かったのは、鍼治療は70%が初めての体験で、満足度は73.8%が大満足、21.8%満足、4.4%が普通だったそうです。
選手の立場から言えば、オリンピックという大舞台で、受けたことのない治療を海外で初めて受けるというのはとてもチャレンジングなことで、成績に影響しかねないことなので治療結果に対する見方はシビアだと思います。
そんな中、高い評価を得たというのは感心しました。
きっと施術者の治療に対する姿勢も、大いに評価されたのだと思います。
発表後に挨拶をさせていただきましたところ、発表された医学会の方はテコンドー6段で、共通の知人(韓国人)がいました。
意外な出会いに驚きましたが、とても嬉しいご縁が繋がりました。
日本・東京五輪で施術される際にはお手伝いできたら嬉しいです。
www.sskm.or.kr/en

次にご報告したいのは、WHOで最前線にいらした斎藤先生のAMR(薬剤耐性)に関するお話です。


このままいくと2050年には、3秒に1人が薬剤耐性菌により死亡するという試算があるほど、世界中に急速に広がっているそうです。
国連でもAMRがトピックとなっていて、人ー環境ー動物 の3者間の相互作用「ワン・ヘルス」という目線で捉えています。
この問題には、衛生、抗菌薬処方、サーベイランス、患者教育、感染予防が重要な鍵となります(Global Action Plan on AMR)。
このような状況下、一般の人の抗菌薬の認識に関する世界的な調査では「風邪に抗菌薬が効くか」という問いに対し「効かない」と認識しているのは30%、日本の調査では「抗菌薬はウィルスをやっつける」と思っている人は46.8%だそうです。
日本のAMR対策アクションプランは、抗菌薬使用を33%減らすことを目標にしています。
(セファロスポリン、キノロン、マクロライド系抗菌薬の使用割合が世界で2番目に多いのが日本)
患者の抗菌薬使用に対する意識改革と漢方の有用性を改めて検討し直すことが、大切だということでした。
AMR臨床リファレンスセンター http://amr.ncgm.go.jp/

「AMR対策に活かす漢方治療」聖路加病院の津田先生のお話は、具体例を挙げてご説明くださり、とても興味深いものでした。
・マラリア:クソニンジン(=青藁)・・・他の薬と一緒に使うと耐性を乗り越えるが、使われすぎてこの薬の耐性菌も出てきた
・感染性下痢:小承気湯(本間棗軒)
・下痢:大黄 センノシドが病原体を追い払う emodinが抗バクテリア作用、瀉下活性強い、細胞膜の等価性変化など タンニンが下痢を止める
・肺膿瘍(曲直瀬玄朔) 病のフェーズ毎に漢方を使い分けた(十味排毒湯、托裏消毒散、透膿散、排膿散及湯、内択散←これらのほとんどに含まれる桔梗の有効成分の研究がまだまだ)
・インフルエンザ(=天行中風):麻黄湯(平均29時間で解熱、麻黄剤はサイトカインに働きかける?C型肝炎へのインターフェロン治療と併用すると副作用軽減、病原体の退治に留まらず宿主免疫の最適化、安価:23.7円) それまで中風は脳梗塞後遺症と思われていたが、天行中風をインフルエンザと同定した 天行とは感染症、パンデミックなど大流行を周期的に起こすこと
・スペイン風邪(森道伯)3型にわけ、それぞれ異なる漢方で治療
・天然痘(本間棗軒)3型にわけ、それぞれ異なる漢方で治療
・誤嚥性肺炎:半夏厚朴湯(嚥下機能向上により抗菌薬減量)
・家畜の抗菌薬投与中止(WHOが勧告):神粷(=黒麹、家畜の病原体を減らす、少ない餌で早く成長、悪臭低下)、人中黄(=人糞) *飼料の利権問題で前に進んでいないのが現状
★結核の薬剤耐性がどんどん高度化し治療薬がなくなる恐れ→漢方による治療の重要性が見直されるだろう

「医薬学と複雑系数理学からの挑戦」という医療(未病)と数学(DNB理論)のコラボレーションのお話も、インパクトがありました。兼ねてから易経と類似点があるように感じていたため、複雑系数理学に興味がありました。その数学が未病の治療に乗り出したというので、興味津々でお話を伺いました。
内閣府は平成26年7月の閣議決定で「健康医療戦略において未病の重要性」を示しました。
東京大学・生産技術研究所の合原一幸教授(漢方が好き)が、複雑系DNB(Dynamical Network Biomarkers)理論=疾病前状態の検出に関する複雑系数理モデル理論を用いて、「未病を数式化」するという取り組みをされているそうです。
「ゆらぎ(ブレた状態、バラバラした状態)」をキャッチし、その後に大きな変化が起こることを予測するというものです。
「ゆらぎが起こる」のは、回復力、レジリエンスが低下し混乱した状態であることを示しているそうです。
・糖尿病 メタボ発症マウスの脂肪組織→7週目で発症・5週目でゆらぎ発生
     防風通聖散を使用する→発症(ー)・ゆらぎ(ー)
・大腸炎 IBDマウスの腸管組織→5日目で発症・3日目でゆらぎ発生
     大建中湯を使用する→発症(ー)、ゆらぎ(+)
未病段階と疾病形成後で用いる薬が異なると考え、今後研究を進めていきたい、とのことでした。
ちなみに易経ではここでいう「ゆらぎ」を「兆し(萌し)」と読んでいます。
個人的には、全く異なる学問でありながら東洋哲学の中核とも言える易経と共通点があることから、複雑系数理学による東洋医学の「未病」の解明と漢方治療の最適化の研究に大いに期待しています。

中医学(漢方薬を中医学的に処方)で胃がん治療をなさっている、きのくに漢方クリニックの田中一先生の処方は、興味深かったです。弁証論治の組み立てをもっと詳しく伺ってみたかったです。

アーユルヴェーダと漢方を駆使して治療をされている上馬場先生のお話を久々に伺いましたが、今日のお話も大変興味深かった点が2点あります。
1つ目は、医心方にインドのジーヴァカが耆婆という名で登場するということ。
2つ目は、気血両虚、心血虚、肝陽上亢(肩こり、不安感、焦燥感、咽頭違和感、のぼせ、手掌火照り、倦怠感、生理不順、下肢冷)などの人々に漢方薬がうまく適合しなかった時に、アシュワガンダとシャータワリーというインドのハーブをアーユルヴェーダ理論で使用し著効を得たということ。しかも漢方と併用し相乗効果もあった例もあるそうです。
医心方の時代からインド生薬が漢方と併用されていたことも、教えていただきました。

第48回東洋医学会学術総会の会頭をされた三谷和合先生の哲学について、息子さんの三谷和男先生がお話しくださいました。
息子さんならではのご苦労も伺いましたが、それ以上に魅力的な医師(本当は哲学者になりたかったそうです)であったことが十二分に伝わってきました。
ハッとさせられた事をいくつか、報告します。
1、(舌診で良くなっていく条件が整っているか確認する)治療効果がでない時、薬で治る状態ができていないのであればまずそれを整える(例えば24時間仕事をして起こる頭痛やめまい→薬を使うのではなくまず休む事)
2、一に養生、二に看病、三、四がなくて五に薬(病人さんを診る)
3、今の時代の矛盾がその人にどう現れているか、を考える(流れ、背景=生きてきたプロセス、家庭環境、いま抱えている問題)
4、師に学び、古典に学び、何よりもまず患者さんから学ぶ
5、心音は耳で聴くのではなく、心で聴く(心身を磨いて患者さんに接する)
6、望診の望:遠くを見渡す、見えないものを察する、治っていくと待望して見つめる
7、たとえ保険点数がついていなくても、患者さんに役立つと思うことはやらなあかん。赤字は出されへんけど、赤字覚悟でやらんと漢方治療にならへん。この仕事でええ車に乗ろうと思ったらあかん。
8、病を診するは易く症を得るは難し「医界之鉄椎」和田晢十郎 終始熟練の上にて其観法を自然に得しものなり
9、加賀谷病院(三谷先生の病院)は加賀谷学校と呼ばれた 病気のことを勉強し卒業していくところの比喩
この他には、1973年の「漢方医療に健康保険の全面的適用をすすめる会」などの積極的な働きかけにより今日漢方が保険診療となっていることと、健康保険から外そうとする動きはずっとあるのだという事を知りました。最近も危機的状況である事を耳にする機会がありましたが、今に始まった事ではないということ、先人たちの尽力により今があることがわかりました。

以上、誤字脱字や間違った理解があるかもしれませんが、取り急ぎご報告いたします。
もし修正が必要な箇所など、何かお気付きの方がいらっしゃいましたら、ご指摘いただければ幸いです。

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このページは、shantiが2018年6月 9日 22:24に書いたブログ記事です。

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